平和不動産株式会社
平成13年2月16日
各     位 東京都中央区日本橋兜町1番10号
平和不動産株式会社
取締役社長
井 阪 健 一
(コード番号8803)
  問合わせ先
  専務取締役 田中 良二
TEL 03(3666)0181
大阪証券ビル(市場館)の開発・保存方策検討研究会の検討結果について
大阪証券ビル(市場館)の建替えにあたり、昨年9月に設置いたしました標記検討研究会が終了し、下記の検討結果の報告を受けましたので、その内容についてお知らせいたします。
なお、当社はこの結果を踏まえ、今後具体案を作成していく所存です。
大阪証券取引所(市場館)開発・保存方策検討研究会検討結果

● はじめに

昭和10年に竣工した市場館は、大阪経済の発展に大きく貢献してきたが、昨今の情報化の進展により、証券取引の形が変化し、大阪証券取引所の移転後、この建物の新用途への転用が困難で、事業者は建替えを余儀なくされた。
建替え計画の検討にあたり、新しく投入されるべき施設機能と、市場館の持つ文化的価値の継承との、両者の接点を探ることを目的とし本研究会が組織されたのは既報のとおりである。


● 検討の与件(検討に先立ち前提とした考え方)

1.開発目標「三つの柱」

検討を開始するにあたっての開発の目標は以下のとおり。

(1)情報発信の場としての新しい拠点づくり

(2)大阪市民になじんだ北浜の顔を、文化資産として継承

(3)北浜から船場へ:北浜における経済活動を復活させるプログラム

2.新しいビルの機能

事業者が想定している建替え後の新しいビルのイメージは、敷地のポテンシャルを最大限引き出すことを目指しつつ、かつ開発と保存を両立させる観点から、市場館の輪郭が継承された低層部と上層部に分けられ、中層部には屋上庭園が配されている。各部の施設機能は以下のとおり。

(1) 低層部は、旧市場館のシンボル性と知名度を活用した活性化施設や集客力のあるテナントや金融をキーワードとしての情報・交流施設を誘致する。文化資産の継承の場としても機能することを目指している。

(2) 中層部には、屋上庭園が配されていて、オフィスワーカーのアメニティー空間として、外部との交流の場・もてなしの空間としての利用が想定されている。市場館円筒部最上階部分と屋上庭園という新旧空間の対比による空間演出が図られることを目指している。

(3) 上層部は、外資系企業・ベンチャー企業なども含めた、さまざまなテナントに対応できる、フレキシブルで、最新の設備を有する高機能のオフィスビルとする。


● 検討の流れ

1.市場館の歴史的景観的価値について

検討を始めるにあたり、市場館の歴史的景観的価値について確認を行った。

(1) 時間と空間の双方においてモニュメンタル(ランドマーク的)な存在である市場館というものの特性を確認した。江戸時代の金相場会所(1743年)から、戦前の大阪の繁栄期、戦後の復興から高度経済成長期をへて今日まで約260年ものあいだ時代を見続けてきた‘時の証人’としての性格が特筆される。また、金融のキタハマとしての中心であり、大阪を代表する場所のひとつである北浜交差点と聞いたときに大阪市民がイメージする風景として、市場館の姿は無くてはならないものになっているほど、市民生活にしみこんでいることから ‘場所の証人’としての価値も忘れてはならない。

(2) 建築様式史的な観点からまとめると、新古典主義建築の記念碑的な印象と、近代建築(モダニズム建築)の新しさが、たくみに調和されたデザインである。この造形により、証券取引所の重要性が都市の中で意味づけられている。特に、交差点に面した円筒部と、北面・西面のプレーンな表情とが対比的に用いられ、変化に富んだ都市景観が生み出されている。

(3) 交差点の対角線側の歩道から建物が最もよく見え、市場館のシルエットが美しく見える造形的工夫が巧みに施されている。近くからは洗練されたディテールが楽しめる。まちなみ景観にとり、二度とは出ないほどの財産であると言える。

(4) 外観の特徴を踏まえると、堺筋と土佐堀通りとの交差点の反対側からの外観が、都市景観上重要な視点であることは前述したが、ここから見たときに、市場館の佇まいが残ることが望ましい。

(5) 内部空間の様式史的価値を考慮したときに、また竣工当時のままの姿を残しているかどうかもあわせ考えて、エントランスホールが極めて価値が高いといえる。もし、新しい施設機能の中で、この空間が活かされるなら、歴史的価値の継承という観点からは、当初の形状で保たれることが重要である。


2.検討の方法と歴史継承の方向性について

保存範囲と保存方法について検討するに際し、保存範囲に関しては、堺筋と土佐堀通り側からの景観を重視し、全面建替えから、壁面保存、内部空間(エントランスホール周り)一部保存、全面保存まで想定した。保存方法については、構造・仕上げとも更新するレプリカによるイメージ再現から、壁面の仕上げのみを利用する保存、壁面を構造体も含めた保存、内部空間を伴う保存までの幅を想定した。
さらに、事業者が所有する、市場館と隣接する本館のそれぞれの敷地を一体的に開発することが決まっており、検討に際しては、両敷地の間の道路を廃道し、一敷地として利用する場合も検討の対象とした。
歴史的景観的価値を踏まえ、本物(オーセンティシティー)を後世に伝えるという観点と、景観的な観点や、新しい機能との関連という観点を視野において議論を行った。事業性(保存によるコスト・工期の増加や事業の成立性等)、工法や技術的課題等からの分析も参考にした。
その結果、外観上は、堺筋と土佐堀通りとの交差点の反対側から見たときに、市場館の輪郭や佇まいが残ることが望ましいということになった。
旧市場館の外観継承イメージ
堺筋、土佐堀通り西側、難波橋の3方向からアプローチするときの市場館の見え方は、今までと変わらない。
立会場については新しい機能を考えると現状の全部または一部の保存は困難であることを確認した。


● まとめと課題

新しい機能を想定し、保存部分がどのように活用できるかを考えながら、保存と開発が両立できるためのポイントとなる項目を、歴史的景観的価値の継承という観点と、保存とその効果的活用(機能)という観点からまとめた。

1.歴史的景観的価値の継承の観点から

(1) 本物(オーセンティシティー)を残すことが重要であり、外観としては、堺筋と土佐堀通りとの交差点の反対側から見たときに、市場館の輪郭や佇まいが残ることが望ましい。

(2) 内部空間は、1階エントランスホールが極めて重要である。当初の形状で保たれることが重要であるが、具体案を詰める中で、新しい機能との整合性、平面計画上の制約などの理由により、一部内壁保存も検討の対象とする。

(3) 新しいオフィス棟が市場館の上に建つことになるが、その場合でも、市場館屋上のシルエットを見せるように、オフィス棟壁面はなるべくセットバックさせることが望ましい。

(4) エントランスホール等のディテールを活用することが望ましい。


2.保存とその効果的活用(機能)という観点から

(1) 開発目標にある「三つの柱」を目指した施設づくりが重要である。今後具体案を作成していく中で、モニュメント性と機能双方からの検討により、保存範囲を決めることが重要である。

(2) 歴史的空間を新しい用途に変えたとき、その空間が一般の人々にとりどのような意味を持つのかをよく考えることが重要である。単に過去の遺物では意味が無く、記念性と商業の融合を目指すことが重要である。

(3) 低層部に商業的な用途が入居する場合は、内部のアクティビティーが外から見えるようにすることが望ましい。よって、今後、交差点からみた市場館の佇まいを継承しながらも、土佐堀通り側の外壁については、景観との兼ね合いを考えつつ、開放性のある壁面とすることも検討していくことが重要となる。


● 最後に

以上の検討を踏まえて、事業者、行政、設計者が、互いにアイディアを出し合い、よりよい具体案の作成に進まれることを願うというのが本研究会の結びである。



検討研究会委員構成

(景観、都市計画) 三輪雅久 大阪市立大学名誉教授(座長)

(建築計画) 舟橋國男 大阪大学大学院教授

(建築史) 石田潤一郎 滋賀県立大学助教授

(建築史) 山形政昭 大阪芸術大学教授

(都市史・都市計画) 中川 理 京都工芸繊維大学助教授

(建築構造) 西澤英和 京都大学講師

(証券業界) 片山通夫 大証正会員協会会長

(商業コンサルタント) モナト久美子 業態開発研究所所長


設計事務所

三菱地所株式会社一級建築士事務所
以  上
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